茶飯釜の茶事 平成17年3月17日(木)
茶飯釜 敬典造
釜の前後に「飢来飯」・
「渇来茶」の三字が鋳出
されています。
炉縁 唐松蒔絵
花曇りのしっとりとした何よりの日和に「和喜庵」にて茶飯釜の茶事が行われま
した。
茶友の I さんとご一緒に参りました。相客は七人でした。
茶飯釜の茶事は「茶事七式」には含まれていないところが「まぼろしの茶事」と
称されているようです。
また、「茶飯釜」は歌舞伎の「伽羅先代萩」に登場することでよく知られていま
す。
水指 夜寒焼
薄茶点前も終わり、お道具の拝見も済むと亭主は道具を水屋に引き再びふすまをあけて中
に入り、退出の挨拶になります。
名残おしく花を心にとめ、床、釜を拝見し茶事は終了いたしました。
隣室に庵主さまお手製の「あんみつ」がご用意されており、感謝して美味しくいただきました。
寄付に戻った客は一同お互いにお相伴の挨拶をして、今日の楽しさを語り合い、身づくろい
をして帰途につきました。
おもてなしのあり方、お点前の美しさ、あたたかいお人柄、たいへん多くのことを学ばせてい
ただきましたことに感謝いたします。
春野蒔絵 輪島塗
煙草盆
干菓子
茶事ゆえ、お点前中は撮影を控えましたので茶碗は写せませんでした。
濃茶の後は茶事もいよいよ終わりに近づき、続き薄茶になりました。ご亭主の寛容なおもて
なしで、茶碗を替えて二服も頂戴いたしました。
唐物写 茄子 膳所焼
銘 侘びの友 井口海仙
雪月花緞子
茶事のメインとなるセレモニーの茶・濃茶点前が始まりました。
物静かな手慣れた美しい点前で心を込めて練り上げられた一服を頂戴いたし至福を感じる
ひとときでした。 茶銘 葵の昔
花 姫こぶし・藪椿
花入 美濃焼
御幸棚
席中より銅鑼の音が響いてきた後、後入りになり、席入りの所作、蹲の使い方などは初入
と同様にして入席いたします。
前席の軸は巻き上げられ、床の中釘には花がかけられています。
道具畳には「御幸棚」・茶入がおかれてあります。
一同が床・釜を拝見し、着座して席中が静まったころにご亭主が茶道口をあけ、主客と
も一礼。
正客の「どうぞお入りを」の一言で亭主は席中に入り主客ともに挨拶を交わします。
その後、初炭点前が始まります。この炭点前の時、湿し灰が炉中一杯に撒かれました。
これは後のご飯を炊く時に火吹竹で吹くので灰かぐらが立たないようにとの配慮をして下
さったのです。
炭点前が終わると、ざるに洗い米・蓋置・茶巾・杓子・火吹竹を載せた長盆を持ち出し、
釜を鎖から外し、ざるの米を釜に入れます。釜を鎖にかけ、客全員も助けて火吹竹で吹い
て火力を強めます。薄暗い茶室にパチパチと火花がちる様は茶飯釜ならではの風情でし
た。
お膳が持ち出されるあいだに床の香合を床から取り拝見に廻しました。
向付を載せたお膳が持ち出され、一献受けお向をいただきました。次に「煮物椀」が出さ
れいただいている頃にいいしれぬ甘い香りがただよってきました。亭主は釜を上げ、水屋
から「金色」を持ち出し鎖に懸けます。そして飯椀が手送りされ、また「金色の汁」も廻り、ふ
っくらと炊き上がったご飯と汁を頂戴いたしました。
「焼物」が出され、亭主は飯器を持ち出し、ご飯を移します。飯器は長盆の左に置き、釜を
水屋に引き、洗って水を張りヌレ釜を持ち出し「炊き合わせ鍋」を鎖からはずし客に出し、ヌ
レ釜を鎖に懸けます。
「炊き合わせ鍋」も廻り、飯器も出されました。
次に「和物」が出され、常のごとく「八寸」・「湯斗」・「香物」も出され美味しく手料理を
頂戴いたしました。
脚をいたわってくださり、菓子は「立礼」の席にご用意くださいました。
菓子をいただいて、中立になりました。
待合にて富士画賛のお軸と富士桜を拝見し、汲み出しをいただいてから露地草履を履
き外腰掛に移りました。
ご亭主が蹲の水を周りの樹木や下草などに撒き、自身が手と口を清め手桶の水を蹲に
あけきったあとの迎付を受け、主客ともに無言で一礼を交わしました。
客一同蹲で手と口を清めて広間茶室(8畳 中の間)に入室いたしました。
流水桃花物外春 江戸末期
高野山管長 筆
蛤香合
ご飯を炊くため香はたか
ないので床に飾ります。