七事式
禅語に七事随身の言葉があり、禅僧が常に身に携えている、三衣・一鉢・香
合・払子・浴具・尼師檀(座具)・紙被 のことで、茶道では、懐紙・袱紗・
扇子の三具で、それがちゃんと身についていて、ある時は、扇子を前に置き、
自らを現わし、ある時は袱紗にて棗、茶杓を拭きます。すでに水屋にてあらた
められている道具を、更に点前にて拭いて清めます。わたし達は払拭をもとと
します。常にその行為で自らを払い拭いていくのです。これが茶道を学ぶ根本
なのです。
流祖川上不白とその師、表千家七代如心斎宗匠は、茶は草庵茶室で一部茶人
のみの楽しみとはせず、広く求めるようになり、草庵から広間へと茶道の改革
に取り組み、お互いが切磋琢磨して茶道の精神と技を磨き、しっかりと身につ
くようにと考案されたものが七事式です。
茶道は、花を生け、香を焚き、濃茶を点て、薄茶を点てていきます。客とな
り、ある時は亭主となり、その時、その場に従って随所に主となり客となる茶
力を養っていかねばなりません。七事はそのための式なのです。
流祖は、七事こそ流の宝と申されました。不白筆記の中で、「師と共に昼夜
これを論ず」と、七事式の花月ひとつとっても、完成には十数余年の歳月がか
けられ、その苦労がうかがわれます。
花 月 流祖不白と師の如心斎が考案したもので、七事式中最も変化に富
むものです。通常は五人で行い、花月札を用いて「花」に当たった
人が茶を点て、「月」に当たった人が茶を喫していきます。
茶道に対して臨機応変に対処できるよう学ぶところにこの式の目
的があり、熟練を積まねばなかなか理解できません。その時々によ
り的確に判断し、滞りなく進めていきます。
濃茶付・花付・炭付花月等応用があります。
且 座 且座とは、臨済宗の宗祖臨済義玄の語録を集録した「臨済禄」の
「且座喫茶」からとったもので、禅語を名称にしたものです。「し
ゃざ」もしくは「さざ」と読みます。
折居で役割を決め、花が東、月が半東、一客が花を生け、二客が
炭、三客が香と、五役を定め、半東が諸々の準備を整え進行します
東が濃茶を点て、半東が薄茶を点てます。
廻り炭 炉の季節に限って行われます。
客一同炉辺に寄り、主客ともに各自思い思いの炭をつぎ、嫌い炭
(丁字、帆かけ、十字、重ね)をさけ、一巡とは限らず留炭がかか
るまで炭の変化を楽しみます。
茶カフキ 茶カフキは闘茶より考案され、「茶カブキ」と言います。
試茶二服、本茶三服を棗に入れ五ツとし、長盆にのせ棚に飾り、
試茶をもとに本茶を飲み当てます。当日使用する茶銘、茶舗を掛板
に書いておきます。水屋にて折居で東と執筆者を決めておきます。
廻り花 四季折々の花を生け花の自然を楽しむと共に、茶花の生け方の勉
強をするもので、数種類の花を巧みに生け変えたり、前の人の花を
生けかえず、一枝添えて花の風情を加えたり、一巡とは限らず「ど
うぞお水にてお留め下さい」の声が掛かるまで致します。
一二三 東の点前(濃茶)を連客が評価するもので、点前を行ったあと、
札を打ち採点します。札を打つ人は、公正に私情を入れず厳格に行
います。点前の向上の為に役立てられます。
宗匠付一二三・薄茶の一二三・花の一二三・炭の一二三もありま
す。
数 茶 花月の裏に当たるもので、花月が厳格な式に行われるのに対して
煙草盆、菓子器を持ち出し席中を和らげ、連客一同薄茶をいただく
趣向です。六名ないし十名位で行います。
亭主、札元、目付の役を決め、亭主が人数分の茶を点て、札元が
札を扱い、札に当たった人が茶を飲み、人数の多い場合、目付の判
断で「おもやい(お申し合わせ)でお願いします。」と声をかける
こともあります。
以上の七事のほかに当流では五事一行があります。
五事一行 流祖不白が利休忌の折、考案したもので、七事のうち廻り花・廻
り炭・且座・花月・一二三の五事を一度に行います。
文献 不白流点前教則 七事式編